日々の抄

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 このひと月は何だったのか

2017年10月31日(火)

 9月25日、臨時国会での冒頭解散首相が表明してからこのひと月の政界の動きはいったい何だったのか。そもそも衆院解散の理由が、北朝鮮情勢、まだ2年も時間がある消費税の支途変更という「国難」だいう訳の分からない理由からして理解できない。北朝鮮情勢で民意に何を問うというのか。与党が選挙に勝てそうだという理由で600億円もの支出は到底妥当とは思えないが、選挙結果は与党のとって望外のものだった。

 「森友、加計問題は選挙中に丁寧に説明します」などと言っておきながら、選挙中のどこでそのことに触れたのだろうか。いままで、「集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更」の閣議決定、安保関連法、原発再稼働なども「丁寧な説明をする」としていたが、どこで「丁寧な説明」があったのか。「世論が時間に流されて忘れ去るのを待つ」ことと「丁寧な説明をする」は同義語に聞こえる。
 
 首相の選挙運動中の発言に事実に反するものがあった。
 ・「自衛隊の存在自体に対して、朝日新聞の調査で憲法学者の7割以上が憲法違反だといっている」(9月25日、NHKのニュース)について。
 1991年、憲法と国連平和維持活動(PKO)協力法案などとの関係についてアンケートの81人から回答では「9条に照らして、自衛隊はそもそも違憲」と答えたのは78%あったが、2015年6月下旬、憲法学者らへのアンケート122人から回答では、「憲法違反にあたる」と答えたのは41%(50人)で、26年前の結果を引用することは適切ではない。
 ・「(獣医学部新設に関係する国家戦略特区を議論する)ワーキンググループなどのプロセスはすべて公開されていますから」(10月9日のTBSのニュース番組)について。
 2015年6月5日、愛媛県と今治市の担当者が出席した非公開のWG会合が開かれ、加計学園の関係者3人も出席・発言しているが、今年3月にHPの公表では、学園関係者の出席については触れなかった。また、学園関係者は「説明補助者」と位置づけ、「通常、説明補助者は参加者と扱っていない」として、発言は「非公式な補足発言」だったため公表しなかったとの見解を示しており、「すべて公開されて」いないことと反している。

 与党は北朝鮮情勢で危険なことを煽り、経済政策での手前みそに徹していた。株価がいくら上昇しても、庶民の所得が増え、生活が豊かになったという実感がなければ、絵に描いた餅を見せられているにすぎない。また、本命である改憲についてどれほど語ったのか。就業率が上がったと喧伝しても非正規の就業では、経済的に安定し家庭をもって子供をもうけるつながりにくい。少子対策は非正規雇用をなくすことだろう。
 
 待機児童対策や幼児教育の無償化などを盛り込んだ年2兆円規模の与党の公約を実行するための原資が不足しているとして、経団連に3000億円の拠出を要請し、それを受諾するという。初めから原資不足を経済界に依存していることに、またそれにすぐに呼応する経済界に、それほどの蓄えがあるなら、労働者になぜ還元していないのかと腹立たしささえ覚えないわけにいかない。
 
 「謙虚に丁寧に」と言いながら、国会の質問時間を与党に有利になるように提案したり、自民大勝は「北朝鮮のおかげ」という麻生発言をみれば、「多数の奢り」は忽ちにして現れてくることは明らかだろう。今回の選挙で最大の罪は、大いなる思い違いをしていた小池希望の党代表と前原前民進党代表だろう。小池氏が「しがらみのない政治」と言いながら、個人的な都合が見え透いた人選があったこと、「排除」「さらさら」発言は決定的だった。希望の党の立ち位置が全く見えない。
 
 自民党は289選挙区で得票率は48%の218議席だったが、議席では75%、比例区(全176議席)は、得票率は33%で66議席(66/176 = 37.5%)。投票しなかった人を含む全有権者に占める自民の絶対得票率は、小選挙区で25%、比例区で17%。自民に票を投じた人は選挙区で4人に1人、比例区で6人に1人でありながら、全議席の61.1%を占めている。
 小選挙区制が民意をいかに反映してないかを考える時期に来ているのではないか。
 
 この選挙を総じれば、「国難なのに選挙をしている場合じゃないだろう」「幼児教育無償化」をするより、「待機児童をなくすために保育園を増やすことが急務だ」ということだろう。

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