日々の抄

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 沖縄の辛苦を思う

2017年12月23日(金)

  沖縄県で以前から米軍航空機事故が発生しているが、最近は住民の生命の危険に限りなく近い事故が発生している。近年、沖縄関係の米軍機事故を列挙すると以下の通りだ。

2015年 8月 沖縄本島沖でヘリが輸送艦への着艦に失敗
2016年9月 沖縄本島沖に攻撃機ハリアーが墜落
    12月 沖縄県名護市辺野古近くの海岸に輸送機オスプレイが不時着水、大破
2017年 1月 伊計島 攻撃ヘリが農道に不時着
     6月 久米島町 CH53 計器不具合表示し着陸
        伊江村 オスプレイ緊急着陸
        鹿児島奄美大島 オスプレイ(普天間基地)緊急着陸
     8月 オーストラリア沖 オスプレイ(普天間基地)墜落
        大分 国東 オスプレイ(普天間基地)緊急着陸
     9月 石垣島 オスプレイ2機 緊急着陸
    10月 東村 CH53が牧草地に緊急着陸し炎上
    11月 沖大東島沖 C2輸送機墜落
        沖縄本島沖 F35戦闘機パネル落下
    12月 宜野湾 CH53の窓 小学校に落下
        宜野湾市の保育園でヘリの部品が見つかる

 10月に東村 CH53緊急着陸し炎上事故の際、放射背物質が検出されている。2004年沖縄国際大への同型機のヘリコプター墜落時にも検出されている。これは、ローターブレード(ローターを構成する細長い翼)の氷結などによる亀裂・劣化を検出するため放射性物質であるストロンチウム90が1個ずつ(CH-53Dのローターブレードは6枚なので合計6個)のステンレス容器に納められており、機体の燃焼により損壊し放射能汚染を引き起こした疑いが持たれている。

 12月小学校の校庭に落下したCH53の窓枠は、校庭で体育の授業を受けていた児童の10m近くだった。また保育園の屋根への落下物も、ほんの少し位置がずれていれば人的被害が起こってもおかしくない。
 
 普天間基地周辺における夜間の騒音回数は、
平成25 13.3回、26年 17.2回、27年 13.5回、28年 23.7回、29年 27.3で、かなり増加している。
 また、海兵隊航空機の事故率は、2004年 5.00に対し2017年 4.40で、この15年で2番目の事故率になっている

 こうした頻発する事故の理由について自衛隊元陸将によると、
「中国、北朝鮮情勢の変化に対応するため、実践を想定した訓練にシフトし、夜間飛行が増加していることもそのひとつ。飛行訓練の増加とともに、兵士、整備士など、全体として組織が疲れているではないかと考えられる」という。
 2003年イラク戦争時にも普天間基地から出撃しており、2004年沖縄国際大へのヘリコプター墜落時も相当の加重労働になっていた。
 米国議会で軍関係者の証言に拠れば、戦闘員、整備士とも人員不足は否めず、実践に対応するための訓練も十分に行われない状態という。
 
 軍用機事故が発生するたびに、沖縄県、住民からの事故防止、飛行訓練の停止を求める声が上がっても、最も最近発生した窓枠落下事故においても「装置に問題はない」として六日後には飛行を開始している。政府も、本心で住民の生命を案じる気持ちがあれば、強行に抗議、申し入れをすることができるはずであり、首相が何のコメントを出してないのはどういうことなのか。航空機そのものに問題がなくとも、過重労働による人的な問題の方がむしろ大きいのではないか。
 
 12月 宜野湾 CH53の窓 小学校に落下事故、保育園へのヘリ部品落下について、米軍、日本政府も事故を認めているにもかかわらず、「ヘリ部品発見、自作自演だ」「そんな所にあるのが悪い」「やらせじゃないか」などという信じがたいネットへの書き込みが続いた。保育園は普天間基地ができる前からあったものだ。小学校への落下物を野次馬根性でやり玉に挙げるなら、米軍、政府に真偽をなぜ問い合わせないのか。
 こういう輩は、自分が安全な場所にいて、命の危険を感じている住民を冷やかし半分に論うことしかできない愚か者としか言いようがなく、この上なく腹立たしい。自分が普天間基地近くに住んでみれば何が起こっているか分かるはずだ。
 
 小生が居住している、全国的に認知度の低いとされる関東の片隅でも深夜にジェット機の爆音で目覚めることが頻繁にあり、いつ落下物があるか、ジェット機がいつ墜落してくるかという恐怖を感じさせられている。相馬が原のオスプレイの飛行訓練では、我が家の上空をガラス戸をビリビリ振動させ、爆音を立てて手の届くような高さで飛行していった姿を忘れることはできない。沖縄の県民はこれに比べようのない恐怖感と不快感を日常的に感じて過ごしているに違いない。
 
 全世界を敵にまわしかねない言動を続けている米国大統領に一体となってべったりと従っている首相を抱えた我が国が米国の属国であることは否めまい。思いやり予算は、米国でなく沖縄県民に配られるべきではないか。安全な場所にいて、沖縄県民の艱難辛苦を慮ることのできない人物は、沖縄県民を傷つけるようなネットへの書き込みを辞めるべきである。

 こうした他人の痛みに思いをおよぼすことができない人物がいることを考えれば、「日本人は親切でやさしい」などという評価はちゃんちゃらおかしい。同じ日本国民として恥ずかしい。

 羽田空港への航空機の発着回数を増加させるため、間もなく都心付近を手の届くほどの高さで民間航空機が飛行する。航空機の部品のみならず、航空機についた氷の塊が落下することは日常的に起こることが予想できる。その時に、都会に居住する人々は沖縄県民が日常的に同じ恐怖を長い間感じていたことに気付くだろう。

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