日々の抄

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 自民党総裁選は誰の為なのか

2021年9月28日(火)

 菅首相の突然の退陣表明によって総裁選選が連日マスコミを賑わしている。安倍前首相に続いて敵前逃亡の感を否めない。
 菅氏は就任直後、国民に向けて「自助」「共助」「公助」を語った。真意はともかく,精一杯努力しても生活がままならぬ自分の生活を考えた時、「なんだ国は何もしてくれないのか」と多くの国民は落胆したに違いない。総務相時代にふるさと納税制度で、問題点を指摘した官僚を左遷させたことを自慢そうに語ったように、人事を道具にした政治手法は「都合の悪いことは進言できない」構造を作り,これが新型コロナ対策での楽観論を続けた後手に徹した対策につながり、国民の信を失わせた致命的な結果を導いた。繰り返された文章の読み違い,読み飛ばしは更に権威を失墜させる引き金になった。衆院選挙を控え、一年前には諸手を挙げ圧倒的多数で総裁に持ち上げておきながら、今は「党の顔」を変えないと自分が再選されないという身勝手な理由が退陣の決定的な理由になったのだろう。議員たちのこうした振る舞いには滑稽ささえ感じる。

 「コロナ対策、外交・安保 敵基地攻撃能力の保有、脱原発、年金、同性婚、選択的夫婦別姓」などもろもろの課題への4人の候補者の論議があったが,そのうちのひとつである「脱原発」について記しておきたい。
 
 河野氏は9月10日の総裁選出馬表明の記者会見で「再生可能エネルギーを最大限、最優先で導入していく。それでも足りないところは、安全性が確認された原発を当面は再稼働していく。問題は軽水炉を再稼働するかどうかの議論ではなく、もんじゅがないのに再処理してプルトニウムを取り出さなければいけないのか。この議論が肝なのです」と発言。そろそろ現実的に核燃料サイクルを方向転換することもテーブルに載せる必要がある」と、脱原発と伝えられていることへの弁明に追われている。

 岸田氏が言うところの、「核のごみ処分10万年が300年に」は、高速増殖原型炉「もんじゅ」がトラブル続きで2016年に廃炉を決定したことからも非現実的。また、高市氏が言うところの現行の原発に変わるものとして「小型原発」は核のゴミが出ることは変わらず、「核融合炉」は実用化できるか不明であり、夢物語は非現実的な空論である。

 いずれも、新規原発についての発言はないのは原子力族(村)への忖度なのか。明確で実現可能な将来へのエネルギー施策は語られているとは言えない。原発再稼働を肯定するなら、核のゴミをどのように処理しようと考えているかの具体案を提言すべきではないか。単に再稼働だけを語るのは政治家として無責任ではないか。


 安倍・菅政権で見られた政権維持・自己保身・身内厚遇、権力を官邸に集中し、異論を排除し不都合な国会質問へ首相がヤジをとばすという品位のないことを繰り返した。言葉で相手を「説得しようとせず」、ご飯論法などといわれる「説明しない」、「結果責任をとらない」という3S政治は、紛れもない政治の腐敗であり奢りである。
 政治不信の大きな問題である、森友問題で再調査を明言しているのは野田氏だけである。氏は「公文書はいじられないという前提だ。それがおかしい。桜を見る会の問題も。分からないことを解明していくのが自民党だ」と語った。

 国会で118回ものウソを並べた、前首相が「キングメーカー気取り」で、総裁選へしゃしゃり出ていることは不愉快きわまりない。その前首相へ忖度しているような候補者の発言に変節が見られる。「森友、加計、桜を見る会」への再調査を述べていたことが「ていねいに説明する」、「調査の必要はない」などに変わっていることがそのひとつである。現政権の「ていねいに説明する」は「説明しない」と同義語である。3S政治の体質が変わらない限り、誰が総裁になっても自民党は変わりようはない。

 「同意なく自民党員の登録、総裁選投票用紙届いた」(毎日9/26)などという報道があったが,こんなことで党改革などと恥ずかしくて言えまい。

 総裁選は自民党を活性化・人気回復する「祭り」だという考え方があるそうだが,連日の報道は自民党がマスコミを席巻し,「祭り」に協力していることにならないのか。
 総選挙を控えて、「野党が批判ばかりしているから与党の数が減らない」と、TVの御用コメンテーターの発言を鵜呑みにしている声を聴く。そうしたひとは野党の政策を調べる努力をしているのだろうか。TVで野党が政策提言していることを報道している番組は数えるしかない。与党寄りの報道はかなり意図的なものを感じないわけにいかない。


今回の総裁選は政治が3S政治から脱却できるか否かの試金石ではないか。無理かな……。

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