日々の抄

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 元日の社説を読んで

2023年1月2日(月)

ことしも新聞各社の社説を読み比べてみた。

█ 朝日新聞
「空爆と警報の街から 戦争を止める英知いまこそ」と題して不条理なロシアによるウクライナ侵攻についての論である。
■不戦の理想、結実せず
 「現在の国際連合を創設するにあたって、第2次大戦に勝利した米英ソ仏中の5カ国は、大国の脱退によって瓦解しないように、「拒否権」という特権を編み出した」「5カ国はそれを自国の利害を押し通す道具にしてしまった。安保理は大国エゴがぶつかり合う舞台に堕した」と憂う。
■無力感超えた構想を
 「科学文明が発達し、国境を越えた人の往来や経済のグローバル化が進んだ21世紀の時代にあって、戦争という蛮行を止める策を、人類がなお持ち得ていないことを。一人の強権的な指導者の専横を抑制する有効な枠組みがないことを」「欧州の東の地域で起きた戦争が、金融、食料、エネルギーの連鎖構造を通して、世界中の人にも痛みをもたらすことも、学んだ」と更に憂い,「 眼前で起きている戦争を一刻も早く止めなければならない。そしてそれと同時に、戦争を未然に防ぐ確かな手立てを今のうちから構想する必要がある。知力を尽くした先人たちにならい、人類の将来を見すえ、英知を結集する年としたい」と結語。
 いずれも同感できるものの、意外にもあっさりした論説であった。しかるに我らは何ができ,何をすべきなのかを論じてほしかった。否,それができないからこその嘆きだったのか。

█ 毎日新聞
 「危機下の民主主義 再生へ市民の力集めたい」と題し緊迫したウクライナ情勢に触れつつ、「内なる先制」について論じている。
 『欧州を震撼させたのは「大ロシアの再建」を目指すプーチン露大統領、「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平体制の中国は、米国との対立を背景に台湾への圧力を強め、東アジア情勢も緊迫する』と状況を案じ,その大きな要因は、『政治指導者が強権的手法を取る「内なる専制」の広がりだ。東欧や新興国に加え、コロナ禍や食料危機で打撃を受ける途上国にも及んでいる』とする。『「権威主義体制の方が効率的ではないか」との言説は今や影を潜めた」としたが、果たしてそうなのか。
人々の不満と不安があっても専制主義による国民を暴力的に制圧していることからの恐怖に対抗して、かつて血塗られながらもクーデターで権力と闘ってきた時代の、生きることへの飢餓感、闘争心の変節なのだろうか。手間と時間のかかる民主主義より手っ取り早さを求める風潮はますます増加しているように見えてならない。強権的手法で今までと異なる自分たちに都合のいい何かが起こるかも知れないと思う「受動的生き方」が根底にあるのではないか。
 結びに「地方の取り組みに期待」として「どうすれば政治を立て直し、民主主義を再生することができるか」として「足下から考える年にしたい」としているが、前段の論調とつながりにくい感は否めなかった。

█ 東京新聞
 『年のはじめに考える 我らに「視点」を与えよ』として、珍しい会話調の論説で講談を聞いている感がある。
 『何事にも「視点=pov=point of view」が肝心と論じ、「ロシアのウクライナ侵攻はいまだ終わる気配がありません。ミャンマーでも民主政権を蹂躙した国軍による市民への弾圧が続いてる』ことに対し,『指導者たちがそうやって、他国や自国民のpovから、自分のしたことを冷静に眺めてみてくれたらと、思わずにいられません』との論は余りにも甘い。それができれば多くの人々が理不尽に命を落とすことなどあるまい。
 最後に『今年は「違い」を楽しむぞ』としていろいろなことにチャレンジしたいというものの、挫折ことが多いのが現実。『それが「何が何でも」とは異なるpov』と括っているが、意味不明である。
 ことしは例年のような社会の底辺にいるひとびとへの視線を感じなかった。

█ 読売新聞
 『平和な世界構築へ先頭に立て 防衛、外交、道義の力を高めよう』として多岐に亘った論を展開。
 ウクライナ侵攻を念頭に、『独裁者が二度と暴走しないようにすることが、新しい秩序作りの出発点だ。そのための第一の方策は、勝てるという錯覚を、相手に抱かせないことだ』としているが、それが国際機関といえどできないでいる現実に対応する考えを聴したいところである。
 『軍事技術の面でも、脅威は格段に高まった。これまでの、「迎撃」本位の防衛体制では対応しきれない。日本を取り巻く安全保障の環境が一変したのだ。政府が「反撃能力」の保有など、防衛政策の大転換となる新しい安全保障政策を決定したのは当然だ。装備、施設、指揮系統など、必要な態勢を構築し、日米同盟関係が確実に機能するよう、準備を急がなければならない』としているが、「反撃能力」は実質的な「先制攻撃」であり明らかに「専守防衛」の国是から外れる。相手国は必ずや,日本がいかに「攻撃の兆しがあった」と言っても相手国は「先制攻撃」されたとして、その何倍ものミサイル攻撃を原発を含めた日本国内に加えてくることは自明であろう。戦争において「攻撃の兆しがあった」は互いの国同士で見解の相違があることは歴史の教えるところである。国民に見える形での地道な国際外交こそ国際紛争への最大の対策である。
 
 『途上国とのパイプ役に』として、『日本は長年、政府開発援助(ODA)やアフリカ開発会議(ticad)開催などで、地域の発展に協力してきた。医療や福祉など生活に密着して、民間人が支援活動を続けてきた実績もある』『日本は国内総生産(GDP)で世界3位の経済大国だが、低成長と低賃金の影響で、1人当たりだと、20年ほど前の2位が27位にまで低下した』『企業にも家計にも、貯蓄は十分にある。それを先端技術や新製品の開発に積極的に振り向け、経済を立て直すことが先決だ』としているが、企業はともかく、「家計に貯蓄がある」とするのは誤りだろう。一部の高収入で潤沢の国民はそうであっても、圧倒的に非正規雇用が蔓延り,年末になれば、寒空の下長蛇の列を作って飢えを凌いでいる人々が絶えない現状をどう見るのか。低収入の為こどもに食べさせるために、一日に一食しかとれない母親をどう考えるのか。消費税導入の時に,社会福祉にすべて当てるとしていたはずが、目的の異なることへの支途が平然と罷り通ることを政治が行っている限り,日本が経済大国だなどということは片腹痛い。

 政権樹立からいくらもしないで閣僚が4人も辞任に追い込まれ,旧統一教会の2世への対応に視点がずらされ,肝心の与党議員の多くが教団との関係問題がなかったように時が過ぎていくこの国の未来は暗い。「政治の信頼国力の礎」と考えるなら,選挙制度を早急に変える必要を感じる。投票数の1/4程度の投票数で,小選挙区制のために議員数が過半数をとるという選挙制度は民意をくみ取っている制度とは到底言えまい。中選挙区制へ変更が早急の課題である。ましてや、参議院の比例制度で当選した議員は、人格を疑うような差別発言を続けていて、当選させたくないと考えてもそれができないという不合理も早急に改善すべきである。
 読売新聞の社説は朝日新聞などの2倍もの字数であり、「出入国管理の施設で外国人の差別的取り扱いが国際的に問題視されるようでは話にならない。内政と外交は一体なのだ」などは同感だが,毎年ながら少々饒舌に感じる。

 現政権が「聞く耳をもっている」としていた首相を擁し、少しだけ期待したものの,元首相の国葬、原発回帰(原発寿命が40年はウソなどと経産省関係者からも喧伝されているが、国内ではじめに建設されたときの設計者は30年としていた)、「反撃能力」という名の「先制攻撃」を可とし、何十兆円もの莫大な出所も不明のままの防衛費を、「ある日突然」宣言していることに限りない戦前回帰を感じ、恐怖さえ覚えている。マスコミに対する軋轢が未だに加えられていると聞く(軋轢を加えている人物は旧統一教会と濃厚な関係をもっていると聞く)。
 マスコミは、善良な国民,日本国のためにと思うなら,大いに力量を発揮して貰いたい。連日TVで政権だけを支援する発言を繰り返している、まるで政権のまわし者のような発言を繰り返しているコメンテーターを喝破する報道を期待したい。新聞を読まず,自分に都合のよいニュースだけSNSなどで見ている国民はそれが真正のことなのか判断できない。フェイクニュースを聞かされ続けていればそれが本当のことだと思い違いする。新聞各社には社会正義を貫くことを大いに期待している。

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