日々の抄

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  褒賞が軽くないか

2006年04月29日(土)

WBC日本代表チーム、フィギュアースケート荒川選手に紫綬褒章が授与されるとの報道があった。彼らのほとんどは20,30歳代である。いくらそれぞれの分野で功績があったとしても、あまりに若くして褒賞を授与されることに少なからず抵抗、違和感を否めない。

その理由は2つある。1つは、そもそも褒賞は、長年にわたる努力のもとに功績があった人びとに与えられるべきものではないかということ。今回の授与はそれなりの功績があったとしても、たった一度の成果が授与対象でいいのかということ。もう一つは、若くして褒賞を授与された後にそのことが重荷になりはしないかということである。

そもそも褒賞は、太政官布告の褒章条例(1881年)で定められ,初めは紅綬褒章(自己の危難を顧みずに人命を救助した者に授与される褒章),緑綬褒章(孝子・順孫・節婦・義僕など、徳行卓越な者に授与される),藍綬褒章(教育・衛生・殖産開発などの事業を興し公衆の利益に功績著明な者、または公共の事務に勤勉し労効顕著な者に授与される)の3種,1918年紺綬褒章(公益のために多額の私財(500万円以上)を寄付した功労者に授与される褒章)が加わり,1955年政令により黄綬褒章(業務に精励して人々の模範たるべき者に与えられる褒章),紫綬褒章の各褒章ができ,6種となった。天皇が内閣の助言と承認により授与する。種類による区別はあるが等級の差はない。

紫綬褒章は「学術・芸術上の発明・改良・創作に関し事績の著しい者を表彰するために制定された褒章」だったが、平成14年8月7日閣議決定の「栄典制度の改革について」で「紫綬褒章については、年齢制限を撤廃し(従来は50歳以上の方が対象とされていた)、科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術分野における優れた業績等に対して、速やかに表彰する。」と改訂されている。

過去にはスポーツ関係の紫綬褒章を遠藤幸雄、アテネオリンピック金メダル受賞者などが受賞しているが、今回の受賞はスポーツ功労者顕彰、国民栄誉賞の方がしっくりすると思うのだが。同じ紫綬褒章の対象が学術・芸術関係ではその道数十年の功労者であることと比べると、受賞へ至るまでのあまりの時間の違いに対して、どうしても違和感がある。ま、紫綬褒章がそんなものと思えばいいだけのことなのか。褒賞は重みを感じさせるものでなければ意味がないと思うのだが。



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