日々の抄

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  強ければいいのか

2006年05月14日(日)

「品なき国に品なきボクサー」。朝日新聞掲載の川柳である。

 破竹の勢いで勝ち数を増やしている亀田兄弟のことのようだ。彼らは確かにボクサーとしては強いようだが、その言動に眉をひそめざるを得ないことがある。試合前のランキングが高くもない外国選手を辱めるような恫喝には、子供たちが憧れの対象になるべきスポーツ選手としての品格は感じられない。最近行われた彼らの試合のTV視聴率が40%を越えたという。彼らをマスコミは挙って取り上げ、正に英雄扱いである。視聴率が高かった事に対して「どんなもんじゃい」と居丈高で語り、自分のことを「カリスマ」だと言い切っている。

相手のニカラグァやタイの選手に対する態度は不遜そのものだ。発展途上の国からみれば日本人の横暴と受け取られても不思議ではなかろう。スポーツは相手選手に対して、それなりの敬意を払えるような余裕が求められるはずだ。そうしたものを彼らに求めるのは無理なのか。彼らの横柄な態度が、諸外国の人びとに「日本人が力をもてばああした態度に出る」と映れば、至極残念なことで迷惑なことだ。

強い者は卓越した技とともに、それなりの品格をもってほしい。強いことだけを賞賛し、彼らの面白おかしいパフォーマンスだけを取り上げているマスコミはどういう気持ちで報道しているのか。頻繁にその後のトレーニングを報道し、シャモを素手で捕まえることまでできるなどと囃し立てているが、視聴率が得られればそれでいいのかと腹立たしい思いだ。日本人のボクシングの選手の言動が諸外国からどのように受け取られていくのかを考えるべきである。

「大きな力には大きなブレーキが必要」である。自分がなし得ない強さを日本人は彼らの姿に求めているのか。一部の力によって差別化が進んでいる最近の社会風潮と重なって見え、力だけで突っ走る危なさを感じて仕方ない。強さは同時に脆さも持ち合わせているはずである。彼らが「心技体」を持ち合わせた選手になってほしいと願うのみである。

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