日々の抄

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  少子化対策にもなるとは

2007年01月08日(月)

 一定の年収以上の会社員を1日8時間の労働時間規制から外し、残業代をなくす「ホワイトカラー・エグゼンプション」が論議されている。エグゼンプション(exemption)は免除の意で、ホワイトカラーを労働基準法の労働時間規制から除外する制度という。
現在は、「労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」によると『労働基準法第37条第1項の政令で定める率は、同法第33条又は第36条第1項の規定により延長した労働時間の労働については2割5分とし、これらの規定により労働させた休日の労働については3割5分とする』と定められている。
しかし、職場全体に「サービス残業は当り前」という雰囲気があったり、「残業代には上限がある」、「定時にタイムカードを押した後、深夜まで働いている」というような状態下で、サービス残業をせざるを得ない場合もあり、厳しい競争と不況下での人員削減と賃金抑制で、サービス残業は増える一方だという。今後、サービス残業について、「変わらない」が56%、「増える」が41%という結果(TECH総研資料による)もある。その結果、肉体的疲労や精神的に追い込まれた自殺や過労死が頻発している。

 そのような中で、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会が昨年12月27日、導入を適当とする報告書をまとめた。対象者の年収条件は「管理職の平均的な年収水準を勘案」とするにとどめ、具体的な金額は示さず、労働基準法の改正後に政省令で決めることにした。同省は来年の通常国会に法案を出す方針としていた。報告書は、対象者の条件として
(1) 労働時間では成果を適切に評価できない
(2) 重要な権限・責任を伴う
(3) 仕事のやり方などを使用者に指示されない
(4) 年収が相当程度高い
としている。

 労働組合側は、労働時間規制がなくなれば過労死が増えるなどとして、導入反対を強く主張したものの「新たな制度の導入は認められないとの意見があった」としていることで取りまとめに応じたというが、労働者の今後の状況があまりに厳しくなることを考えると安易な妥協ではないか。労組側の残業代の割増率の引き上げについても、「一定時間を超える時間外労働は現行(25%)より高い一定率を支払う」とし、曖昧な決着である。年収条件を低くしたい経営側の意向に対して「導入企業ができるだけ広くなるよう配慮すべきだとの意見があった」としている。経団連は(4)の条件について「年収400万円以上」という具体的な金額を出しているが、これは殆どの正社員に当てはまりそうである。つまりは、残業代を支払わず現状よりかなり厳しい労働強化になるに違いない。これが国会を通るなら「ただ働き法案」とでもすべきである。

 ホワイトカラー・エグゼンプションに対する世論の厳しさのためか、自民党の丹羽総務会長は4日、「法律の改正については極めて慎重に対応しなければならない」と強調。公明党の太田代表も同様の慎重姿勢を示している。通常国会(25日召集)への提出見送りを求める声が7日、与党内で強まってきている。労働条件強化に反対してのことではない。夏の参院選を前に法案を提出すれば「野党に格好の攻撃材料を与える」と影響を懸念してのこと。厚生労働省は通常国会に関連法案を提出するそうだが、自民党中川幹事長は7日「法案提出の前にサラリーマンのためになるということが理解されないといけない。そのための説明責任(を果たすこと)が経営者も政府もまだ十分ではない」と述べ、現段階での関連法案の提出は尚早との考えを示しているが、どこがどのようにサラリーマンのためになるのか聞いてみたい。選挙で不利だからホワイトカラー・エグゼンプション導入を一時回避するという目くらましをしているのは全く見え透いた話だ。選挙が終われば選挙民のことは関係ないのか。いったい全体この国の労働組合は何をやっているのか。自分たちの立場を守るためになぜ声を上げ行動しないのか。不思議でならない。

 首相のホワイトカラー・エグゼンプションに対する見解が信じられないものである。導入について『日本人は少し働き過ぎじゃないかという感じを持っている方も多いのではないか』と述べ、労働時間短縮につながるとの見方を示した。残業代が支払われなくなるから残業が減るなどと考えているのか。さらに『(労働時間短縮の結果で増えることになる)家で過ごす時間は、例えば少子化にとっても必要。ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を見直していくべきだ』とも述べ、出生率増加にも役立つという考えを示している。また、『家で家族そろって食卓を囲む時間はもっと必要ではないかと思う』と指摘。長く働くほど残業手当がもらえる仕組みを変えれば、労働者が働く時間を弾力的に決められ、結果として家で過ごす時間も増えると解釈しているらしい。
 残業を好きでやっている人がどこにいるというのか。仮にそういう人がいるとしたら、残業代が必要であるような賃金にしていることが問題なのである。首相はサービス残業を余儀なくされていることをどう思っているのか。全く他人事のように受け止めているとしか思えない。お気楽である。
 首相の考えは「ホワイトカラー・エグゼンプションを導入すれば残業が減少する。そうすれば帰宅が早くなる。したがって家族団らんの時間が増え、子作りに励むようになり少子化に寄与できる。企業にとっては残業代が減って経営にプラスになるだろう」ということか。ホワイトカラーにとっては、「ただ働きを強いられ、休みも取れず、帰宅もままならない」ことにつながってくるだろう。このような無謀な事をサラリーマンに強いなければ日本の企業は立ちゆかないのか。国民の生活を豊かにし、安心で安全な国を目指すことが政治の目標の「はず」ではないのか。現状は相変わらずの弱肉強食ではないか。このような企業側の都合のいい、今までの日本では思いもつかない仕組みを導入しようとしている政権を支持している日本国民は「お人好し」としか言いようがない。所詮お坊ちゃんの2世議員さんには庶民の厳しさは分かるまい。

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