日々の抄

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  級長さんしっかりしましょう

2007年02月24日(土)

 自民党中川幹事長が2月18日に行われた講演で「(閣議前に)首相が入室した時に起立しない、私語を慎めない政治家は美しい国づくり内閣にふさわしくない。自分を最優先する政治家は内閣や官邸から去るべき」「閣僚や官僚は首相への絶対的な忠誠や自己犠牲の精神が求められる」と訴えたという。まるで江戸時代に殿への不忠義者を窘める老中のような発言に驚かされた。
 「再チャレンジ推進会議」、「成長力底上げ戦略構想チーム」などの会議が乱立、教育関係でも「中教審」と「教育再生会議」がどういう関係になっているのかわかりにくい。何人かの首相補佐官と副大臣がどういう関係になっているのかもわかりにくい。

 今国会に提出する予定の教育改革関連3法案について下村官房副長官は1月28日、「(今国会で)成立してもらいたいが、これは柔軟に考えてもいいのではないか」と述べ、今国会では3法案すべての成立にはこだわらずに参院選以降に先送りしてもいいと発言。塩崎官房長官も「成立させるかどうかは国会が決めることだ」と述べ、首相が最も力を入れているであろう、これらの今国会法案成立に消極的なのかと感じられる発言である。
 また、柳沢厚労相の「女性は子供を産む機械」発言、久間防衛相の米国に対する「あんまりえらそうなことを言ってくれるな。日本のことは日本に任せてくれ」、「イラクに核兵器がさもあるかのような状況で、ブッシュ大統領は(開戦に)踏み切ったのだろうが、その判断が間違っていたと思う」、「官民格差はあって当たり前」発言、官房長官の「新たな貧困」発言、高市沖縄相の普天間移設問題でV字形案についての「修正可能なら修正すればいい」発言があった。一方で松岡農水相、伊吹文科相の政治資金については明確な説明がなされているとは言い難い。久間氏は「不勉強だった」と発言を撤回しているが、間違ったことを言っているとは思えない。だが、防衛大臣の発言となると米国としては副大統領が来日しても会いたくなくなるのだろう。

 中川氏が今回の閣僚に対するいかにも大時代がかった「絶対的忠誠」などとしているのは時代錯誤の感を否めない。この「檄」に対して、「首相に求心力がないとは思わない」(外相)、「一種の親心だと思うが、時にうるさく感じることもある」(行改担当相)、「安倍政権を支えるために一生懸命努力している」(法相)、「忠誠心が欠けている閣僚は1人もいない」(国交通相)、「温かい檄だ」(官房副長官)、「黙っていたら雰囲気が暗いとか指摘されたことがあるので、会話をした方がいいのかとうなずいたりしていたが、誤解だった」(沖縄北方担当相)、「経験豊富な幹事長なので、謙虚に指摘を受け止めて、さらに緊張感のある内閣、仕事がはかどる内閣を目指したい」(金融担当相)、「起立していないという話は、少しどういう意味か分からない」(官房長官)など中川氏への反論はいろいろだが、「なんでこんな事を言われなければならないのか」と思ったに違いない。
 だが、「逆効果だ。自ら内閣と党の体たらくをさらけ出してしまった」「何様のつもりだ」とする政府関係者の発言を待つまでもなく、みっともない内閣の姿をさらしてしまっている。そもそも、幹事長は閣議に出席していないのだから、閣議室に首相が入室した時に起立しない、私語を慎めないなどという姿を見ていないはずなのだが。閣議前の前室である大臣室でのTV映像を見て立腹しているならお粗末な話である。首相の前にいるときは襟を正していなければ職務に専念しないとでも思っているのか。閣議は軍隊の会議ではない。大体において、自民党の幹事長は首相や閣僚に横柄な物言いをできるほど偉いのか。

 中川氏は安部氏の父晋太郎氏を通しての兄弟のような関係と聞く。安部氏は年長者を重んずるために、内心では立腹しているであろうことを押さえて「心配していただく必要はない」と発言しているが、一国の責任者としては少々情けない。中川氏には立場を弁える謙虚さ身につけるよう勧めたい。
 安部氏は年長者を重んずるなら、夕張に長年住み、祖父、父とともに石炭産業に身を投じていた夫を失った老いた婦人が、月に4万円程度の年金で細々と暮らし通院も、冬季の暖房もままならずにいることをどう思うのか。この国に貢献し、ひっそりと暮らしている貧しき「人間としての先輩」が安心して暮らせる社会構造を作ることを急いでほしい。つまらぬ言い争いなどしている暇はない。中川氏は「ちょっと言い過ぎた」と首相へ謝罪したそうだが、謝るくらいなら、はじめから発言しないことだ。最近の政治家は自らの発言に対して反発があると、あっけなく訂正や陳謝をするが、信念をもっての発言なら、立場を失っても言葉を翻すべきではない。言葉という刀を抜いたなら最後まで戦うべし。安易に訂正、陳謝する人物の言葉はあまりにも軽く信用できない。

 教育界の学級崩壊が叫ばれて久しいが、内閣まで学級崩壊では情けない。級長さんしっかりしなさい。でも、怒鳴り散らし力で国民を組み敷いて弱い者いじめの社会構造を作った級長さんより人間くさくていい。

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