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20−4 交流(alternating current)
交流発電機の原理は一定の角速度ωでコイルを磁界の中で回転させると,コイル中に正弦波の電圧(起電力)が発生する。瞬間値vは最大値をV0とするとv=V0sinωtで与えられる。
交流を電気抵抗R,コンデンサーC,コイルLの各素子に流した場合,直流の場合にない特徴的な現象(たとえば電圧電流の位相変化)が起こる。以下に各素子での電圧,電流,またそれらの位相差について考える。
20−4−1電気抵抗Rの入った交流回路
図のように電気抵抗(抵抗値R[Ω])に交流を流す。電気抵抗では電圧Vと電流I に位相のずれが起こることはないので,電源電圧をv=V0sinωtとすると,電流I は最大値I0がだから,で与えられる。
電気抵抗での電力PはP=VI=V0I0sin2ωt=V0I0(1−cos2ωt)
電力の時間平均値は
ここにを電圧,電流の実効値という。この式からわかるように,実効値は電力の時間平均値を直流と同じ形で表すことのできる値ということができる。交流では特に断りがない限り電圧,電流は実効値を使う。
また,電流の自乗の時間変化はI2=I0sinωtであり,その平均値はである。これからと表すことができる。つまり,電流の実効値は電流の自乗平均平方根(1サイクルにわたる電流の自乗の平均値の平方根)が,実効値のもう一つの意味である。
100[V]の電圧という場合,実効値が100[V],最大値は100[V]である。電流についても同様に,交流電流1[A]とは実効値が1[A],最大値は[A]である。
電源電圧をv=V0sinωtとする。コイルに交流電源を接続すると,回路には電源電圧vとともに,コイルによる誘導起電力v ' が生じるので,キルヒホッフの第2法則から
v+v'=iR=0 (20-6)
(∵ 電圧降下iRはR=0だから0)
ここで電流i が電圧に対してどのような位相変化があるか調べるために
i=I0sin(ωt+φ) (20-7)
とする。φは電圧と電流間の位相差である。
v ' はだから v+v '=V0sinωt−LI0ωcos(ωt+φ)=0
∴ V0sinωt=LI0ωcos(ωt+φ)
この式が時間に関係なく成り立つために
V0=L I0ω ∴ (20-8)
Lωは誘導リアクタンス(inductive reactance)といい,電流の流しにくさを示す量である。
単位はH/s=(Vs/A)/s=Ω (H(ヘンリー)=Vs/A 20-3自己インダクタンス参照 )
また、sinωt=cos(ωt+φ)が成り立つからφ= これと(20-7)から
i=I0sin(ωt)=
つまりコイルに流れる電流は電圧より位相が遅れている。
この位相差を右図のように示す。
電力の瞬間値Pは
電力の時間平均値Pは P=0 (∵ )
電源電圧をv=V0sinωtとする。コンデンサーに交流電源を接続すると,回路には電源電圧vとともに,コンデンサーに蓄えられた電荷qが作る電位差v' がある。電気抵抗を考えないと,キルヒホッフの第2法則から
v−v '=0 (20-9)
電荷q,電流i,電気容量Cの間には
q=cv ',の関係がある。電流i が電圧に対してどのような位相変化があるか調べるために
i=I0sin(ωt+φ)とすると,
また,である。
これらから
この式が時間に関係なく成り立つために
(20-10)
1/Cωを容量リアクタンス(capacitive reactance)といい,コンデンサーの電流の流しにくさを示す量で単位はΩである。
また cosωt=sin(ωt+φ)から,電圧と電流の位相差はなので電流はi=I0sin(ωt+)=I0cosωt (20-11)
つまりコンデンサーに流れる電流は電圧より位相が進んでいる。
この位相差を右図のように示す。
電力の瞬間値Pは
電力の時間平均値Pは P=0 (∵ )
@ 直列回路(series connection circuit)
R,L,Cそれぞれに流れる電流が等しく,これをi=I0sinωtとする。R,L,Cそれぞれの電圧をVR,VL,VCとすると
vR=I0R・sinωt
vL=
vC=
位相の違いを右図に示す。電源電圧Vは右図のようにそれぞれのベクトル和から
(20-12)
ここで (20-13)
をインピーダンスという。
VとIのなす角度をφとすると、位相角は (20-14)
で与えられる。回路を流れる電流I は
(20-15)
で与えられる。また,cosφを力率という。力率を使って平均電力を表すことができる。
P=V・Icosφ Rだけの場合(φ=0),=V I
L,Cだけの場合(φ=,−),=0
直列回路での共振回路(reasonance circuit)
(20-15)式から回路を流れる電流I は交流の角振動数ω=2πf (f は周波数,単位はHz)によって変化する。分母が最小値つまり Lω=1/CωのときにIが最大値になる。このときの周波数f0(共振周波数という)は
(20-16)
R,L,Cそれぞれの電流をiR,iL,iCとすると,電圧は全て等しい。
これをv=V0sinωtとすると,電源を流れる電流i は
i=iR+iL+iC であり
だから(グラフ参照)
である。
これをi=I0sin(ωt−φ) (I0は最大電流,φは定数)とすると
時刻に独立してこの式が成り立たなければならないから
∴
∴
並列回路での共振回路(parallel resonancecircuit)
(20-17)式から回路を流れる電流I はLω=1/CωのときにI が最小値になる。共振周波数f0は
(20-18) 共振曲線は右図。
20−5 電気振動(electric vibration)
左下図のような回路を作り,スイッチを左に入れてコンデンサーを充電する。つぎにスイッチを右に入れてコンデンサーCとコイルLをつなぐと回路には右下図(減衰振動の場合)のような電気振動が現れる。これはコイルに蓄えられたエネルギーがコイルとの間で互いに入れ替わるために起こるためである。コンデンサーの電荷をq,電流をiとすると(負号はコンデンサーの電荷が減少すると電流が増加することを示す)である。コイルの自己インダクタンスをL,コンデンサーの静電容量をCとすると,キルヒホッフの第2法則から(20-19)
(20-19)式を力学系と比較すると以下の通り。
電気系 電荷q 電流i L 1/C コイルのエネルギー 静電エネルギー 力学系 変位x 速度v 質量m ばね定数k 運動エネルギー 弾性エネルギー
このことから,のように対比させると,力学系の単振動が電気系の電気振動と同じ形式で表されることがわかる。つまり,力学系で単振動の振動数を加速度=−ω2xとして振動数を求めたと同様にして,(20-19)式の右辺=−ω2qとしてωを求め振動数f を計算すると, となる。これは(20-18)式と全く同じである。
右図は非減衰(R=0)の場合の電荷q,電流i,q2(コンデンサーの静電エネルギーに比例),i2(コイルのエネルギーに比例)のグラフである。コンデンサーとコイルの間でエネルギーが入れ替わっている様子がわかる。一方のエネルギーが最大のときにもう一方のエネルギーが最大になっている。t=0での電荷をq0,電流の最大値をI0とすると,
である。
20−6 変圧器(voltage transformer)
右図のように鉄心に1次コイル(巻き数n1),2次コイル(巻き数n2)を巻き,1次コイルに交流電圧をかけると,コイルに流れる 交流電圧の変化に伴って,鉄心の中に時間的に変化する磁束φが生じる。磁束は鉄心からほとんど漏れずに,2次コイルの中を通るので,2次コイルに誘導起電力が発生する。このとき,同時に1次コイルには自己誘導による逆起電力が発生する。
1次コイルの逆起電力v1,2次コイルに生じる誘導起電力v2は磁束がt 間にφの割合で変化するとき
である。この逆起電力につり合う交流電圧v1を1次コイルに加え続けなければならない。だから,電圧の実効値をそれぞれV1,V2とするととなる。それぞれの電圧は巻き数に比例する。
一方でそれぞれに流れる電流I1,I2は電力の損失がないとするとV1I1=V2I2 からである。遠距離まで送電する場合途中の導線でジュール熱(I 2Rt)が発生するので,これを小さくするために,抵抗値Rと電流 I を小さくするために,高電圧,低電流にして送電する。
20-1 電磁誘導の法則
問124 鉛直上向きに磁束密度Bの磁界がある。長さl の金属棒PQが,Q点を中心にして水平面内を角速度ωで回転している。PQの起電力はいくらか。またP,Qのいずれの電位が高いか。
問125 図に示すように,0≦x≦L[m]の領域に紙面裏から表に向かう向きに磁束密度B[T]の一様な磁界があり,それ以外の領域では磁束密度は0[T]である。この磁界中を一辺の長さa[m],全体の抵抗がR[Ω]の正方形の一重コイルabcdを,x方向に一定速度v[m/s]で移動させる。この一重コイルの各辺は,x軸またはy軸に平行に保たれている。また,一重コイルの一辺の長さaは磁界の幅Lよりも小さい(a<L)。
(1) コイルの右端がx=0からx=L+aの点に達するまでのコイルを貫く磁束[Wb](紙面裏から表に向かう向きを正とする)を縦軸,横軸を時刻[s]としてグラフを描け。縦軸,横軸ともに適切な目盛りをつけよ。
(2) コイルの右端がx=0から x=L+a の点に達するまでのコイルに流れる電流 I [A]を,横軸にコイルの右端の位置を x として,グラフを描け。
ただし,上から見た図において反時計まわりに流れる電流を正とする。また,I の大きさの最大値を求めよ。
(3) コイルの辺abが磁界から受ける力F [N]を,横軸をコイルの右端の位置x としてグラフに描け。ただし右向きを正とし,考えるx の範囲は(2)と 同じとする。
問126 磁束密度Bの鉛直上向きの磁界がある。右図のように間隔lのレール上になめらかに動く質量m[Kg]の抵抗のない導線がのっている。電池の起電力はE[V],抵抗Rの抵抗値はR[Ω]である。回路を流れる電流の作る磁界,電池の内部抵抗は無視できる。
(1) スイッチSを入れた直後,導線に流れる電流を求めよ。
(2) スイッチSを入れた直後,導線が磁界から受ける力を求めよ。
(3) 導線の速さがv[m/s]になったとき,導線に流れる電流を求めよ。
(4) (3)の瞬間,導線の加速度を求めよ。
(5) 十分時間が経過した後の,導線の速さv∞を求め,導線が動き始めてから速さがv∞になるまでの時間と速さの関係を示すグラフを描け。
問127 図のように,鉛直上向きの一様な磁界(磁束密度B[T])の中で,l [m]の間隔で平行に並べられたなめらかなレールを,水平面に対してθ の角度に保ち,その上端にR[Ω]の抵抗線と起電力がE[V]の電池をつなぐ。このレール上に質量m[Kg]の金属棒PQをレールに直角に載せて静かに放す。重力加速度の大きさをg[m/s2]とし,R以外の電気抵抗はすべて無視できるものとする。回路を流れる電流が作る磁界は無視できるものとする。
(1) 棒PQが速さv[m/s]で下降しているときPQに発生する誘導起電力を求めよ。
(2) (1)のとき,PQを流れる電流I [A]を求めよ。
(3) (1)のとき,PQが磁界から受ける力の大きさを求めよ。
(4) レールが十分長いものとすると,棒PQの下降する速さは最終的にいくらになるか。
20-4 交流
問128 図のように,断面積S[m2]で1巻きのコイルが磁束密度B[Wb/m2]の一様な磁場の中におかれ,回転軸のまわりを角速度ω[rad/s]で回転している。コイルの両端はR[Ω]の抵抗でつながれている。コイル面が磁場に垂直なときを時刻0として,次の問いに答えよ。
(1) 時刻t [s]での,コイルを貫く磁束φ[Wb]を求めよ。
(2) 時刻t [s]での,コイルに生じる起電力v[V]を求めよ。
(3) 時刻t [s]での,コイルを流れる電流i [A]を求めよ。
(4) 電流の実効値I [A]を求めよ。
(5) 電圧の実効値V [V]を求めよ。
問129 図1のように電圧V=V0sinωt [V]を発生する交流電源が,スイッチSを切り替えることにより,R[Ω]の抵抗,自己インダクタンスL[H]のコイル,あるいは電気容量C[F]のコンデンサーのどれか1つに接続されているものとする。
(1) コイル,コンデンサーに流れるそれぞれの電流の実効値IL,ICをV0を用いて表せ。
(2) 抵抗,コイルでのそれぞれの消費電力の時間平均値PR,PLを求めよ。
電源電圧Vの波形が図2のようであった。
(3) コイル,コンデンサーそれぞれに流れる電流IL,ICの時間変化を解答欄に描け。
(4) コイル,コンデンサーそれぞれの電力PL,PCの時間変化を描け。
問130 30[Ω]の抵抗と,誘導リアクタンスが40[Ω]のコイルを直列につなぎ,50[Hz]の交流電源に接続したら,抵抗に流れる電流が0.50[A]であった。必要なら,とせよ。
(1) コイルの自己インダクタンスは何[H]か。
(2) コイルにかかる電圧は何[V]か。
(3) 電源の電圧は何[V]か。
問131 交流電源の電圧Vが図1のように変化する。交流電源,10Ωの電気抵抗,コイルLを図のように配置する。
数値計算で必要なら,とせよ。PとBを結ぶとコイルLを流れる電流I1は図2のようであった。
(1) 電源電圧の周波数を求めよ。
(2) コイルの自己インダクタンスを求めよ。
PとAを結ぶと図3のように電流I2が流れた。
(3) コイルLの両端の電圧の最大値を求めよ。
(4) 電流I2と電源電圧の位相差を求めよ。
(5) コイルLの両端の電圧の時間変化を図示せよ。
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