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14−3 弦振動

弦を振動させると,両端が節になる定常波ができる。基本振動(右図にマウスを置くと動画になります)
張力をT[N],線密度(単位長当たりの質量)をρ(Kg/m),弦の長さをl[m],弦を伝わる横波の速さをv[m/s],
腹の数をm,それぞれの倍振動での波長を λ1λ2λ3,・・・,振動数をf1f2f3,・・・とすると
      基本振動   l   2倍振動
      2倍振動    
      3倍振動    3倍振動
      m倍振動は    (m=1,2,3,・・・)
ここで,vは 弦を伝わる横波の速さで,弦の線密度をρ(Kg/m),張力を S(N) とするとで与えられるので4倍振動
固有振動数 fm は        (14-6)
で与えられる。またm倍振動の波長λmである。
右図の@〜Cは基本振動,2倍振動,3倍振動,4倍振動の定常波である。
本来は波動方程式 から求められるが,高校ではこの式は使えないので近似して求める(∂は偏微分記号)。
弦を伝わる横波の速さがである理由

(1) 運動方程式による方法

弦の水平部分に働く張力をSとする。弦に力S ' を加え(弦が伸びた分Sより大きい)たとすると,弦に働く力のつり合いから,
        S 'cosθ−S=0    
斜め部分P0P1は上向きに速さuで動き,パルス波が速さvで進むと,長さvt 部分の質量はρvtで,これが上向きの運動量  (ρvt)u だけ増加する。運動量変化は加えられた力積に等しいから
         (ρvt)u(S 'sinθ)tStanθtS()t
       θ≒0とするとsinθ≒tanθS 'Sと見なせるから
         

(2) 波を円運動の一部と考える方法

図(a)の円弧上の点A〜Fの動きを考える。横波が右方へ速さvで進んでいる。微小時間経過した波形を静止系で見ると赤線に示すようにA→A',B→B ',C→C'と下へ,D→D ',E→E ',F→F 'と上へ変位している。これを,右へ速さv(一定)で動く系で見ると,図(b)のように点A〜Fが円弧に沿ってA’〜F’に移動しているように見える。つまり,波が進むことを(円弧と見なした)波と同じ速さで見ると,図(c)のようになる。
l=2rθの部分が半径rで円運動していると考えると,2rθの質量がρ・2rθで,向心力が2Ssinθとなるから,運動方程式は
     ρ・2rθ2Ssinθ
   
θ≒0とすると  
     ρ・2rθ2Sθ        ∴  

(3) 次元解析で求める方法 (次元解析については「力学」−[序論物理量次元]参照)

弦を伝わる横波の速さvは,張力S,線密度ρで与えられから v(Sρ)
次元式は [v]=kS xρ y    ∴  LT-1=(LMT-2)x (ML-1) y
両辺の指数を比べて
Lについて  1=xy ,Tについて -1=−2x    ∴  xyx−1=    
よって         ∴    (k=1はこの方法では求められない)

        波源の振動方向と,弦の振動方向による違い

波源と弦の振動方向が同じ場合は,振動数は互いに等しいが,これらが直交する場合は違う結果になる。図のように,波源として音叉を考えると音叉の振動方向と弦の振動方向が異なるときの時間変化になる。つまり音叉が2周期分動く間に弦は1周期だけ動くことになる。この結果音叉の振動数f1と弦の振動数f2の間には
        f12f2 の関係がある。 
例えば,次図のように直交した弦振動(長さ,張力同じ)の腹の数は 2:1の割合になる。  


14−4 気柱振動

閉管

一端が閉じた管を閉管という。瓶の口を吹いた場合,弱く吹いた場合,強く吹いた場合で何種類かの音を出して遊んだ経験は誰しもあるだろう。万年筆のキャップの場合も同じである。
   開端から入射した音波が閉端で固定端反射して干渉して,開端が腹,閉端は節になるような定常波がで きる。節の位置は交互に疎密になり,密度変化が最大である。開口部の腹は開端から少し出た位置にあり,そのずれを開口端補正l という。最も低い定常波の振動数を基本振動数という。一端が腹,他端が節になるから倍振動は奇数倍音になる。弦の場合と同じ方法で,管の長さをl ,腹の数をn,それぞれの倍振動での波長をλ1λ2λ3,・・・,振動数をf1f2f3,・・・とするとそれぞれの倍音の振動数を求めると
     
基本振動  
     
3倍振動  
     
5倍振動  
     
n 倍振動は      (14-7)       (n=1,2,3,・・・)          
ただし,vは空気中の音速である。


      管内の音速は厳密には自由大気中の音速より遅くなる。
       円管の直径を d(cm),音源の振動数を f とすると,管内の音速V は自由大気中の音速 v とすると常温では,V v である。

開管

両端が開いた管を開管という。一般の管楽器は開管である。一端から入射した音波が他端で自由端反射し,再び元の開端で自由端反射を繰り返し干渉して,両端が腹になるような定常波ができる。節は密になること,密の部分は密度が最も大きく変化することは閉管と同じである。トロンボーンを思い出してみれば分かるが,長さが変わると開管として長さに応じた音の振動数が決まる。ということは,開端は固定端のように反射するようなものがないのに反射するのである。そうでないと長さに応じた振動数が出ないことになる。

開口端補正l が両端にできる。固有振動数は基本振動数,2,3,・・・と整数倍の振動数ができる。n番目の振動数fnは音速をvとして閉管と同じ方法で振動数を求めると
        (14-8) (n=1,2,3,・・・)  である。
また  波長は である。     

上記のように開口部で自由端反射することによって開管としての定常波ができるが,人が声を出す場合も似たことが起こっている。つまり,声帯を振動させて声を口から発しているが,同時に口から声帯へ向けて反射波が送り返されている。口から発した声をこのような反射波を少なくして外に効率よく送り出すための道具がメガホンである。メガホンの口は人間の口と同じ大きさで,外気に接する部分を広げ反射音を最小にしている。このメガホンの広がり方は,金管楽器開口部のアサガオに似ている。アサガオの広がり方は楽器の種類によって大きく異なる。つまり,フレンチホルン,スーザホンなどは外側に行くほど大きく広がり,コルネット,トロンボーンなどはそれほどの広がり方ではない。
   これらは,発音部と外気とのインピーダンスマッチングのためと考えることができる。交流回路でのインピーダンスのマッチングは,入力側と出力側のインピーダンスが一致しているとエネルギーロスが最小になる。音波の場合もこれと同じようなことが関係している。

開口端補正 l の求め方

右図のような気柱共鳴装置で音叉を管口部で鳴らし基本振動,3倍振動で共鳴させる。気柱の長さをそれぞれl1l2とすると,    λ=2(l2l1)だから
        (14-9) である。
これをグラフを次図のようなグラフを描いて求めることもできる。

開口端補正は,管の半径,振動数,管の形状、開口部の面積によって異なることが知られている。
開口部に覆いがない場合lは内半径をrとすると0.6r,無限に広い覆いがある場合(広い壁に取り付けられたような場合)0.85r(=)であることが知られている。 ( 開口端補正の実験結果例(内径r=1.53cmの円形断面 )



                      演習問題                       解答


13-1 波動 波の方程式
問93 弦がx軸に沿って置かれている。x軸上の一点Oを原点とし,右方を正の向きとする。x軸に垂直なy軸方向は弦の横振動の変位を表す。弦の左端に振動発生器を取りつけ,弦を一定の振幅で周期的に振動させると波はx軸の正の向きに伝わった。波は正弦波として以下の問いに答えよ。
弦を伝わる波は,時刻t=0[s]では右図の実線のような波形を示した。また,時刻t=0.9[s]では破線で示すような波形になって,その間に,波の山Pは山P' に進んだ。

(a) この波の (ア)波長 (イ)周期 (ウ)弦を伝わる波の速さを求めよ。
(b) 実線で示す波の原点Oから右方x[m]離れた点の変位y[m]をt x の関数として表せ。ただし,(a)で求めた数値などを用いよ。


13-2 波の性質 定常波
問94 次の文中[ ]のところに適当する語または式を書け。変位が波動として+x方向に,速さV で進んでいる。時刻tが0のとき,波の形が     ・・・・@   で表わされるならば,これは正弦波であり,常数λは波長を表す。この波の任意の時刻tにおける式を求めるには,原点0を Vt だけ右にずらした座標で表せば@と同じ形となることから ・・・A
とすればよい。Aで任意の点xに注目すると,その点での は振幅aで(b)[ ]振動を行い,その振動数はAから(c)[ ]となる。
  次に@と同じ形の波が−x方向に同じ速さで進んでいるときは,その波の任意の時刻t における式は・・・B
と書くことができる。ここにδはある常数である。もしAとBで表される2つの波が同じ媒質の中にあって,重ね合せの原理が成り立つとすれば,合成波は
  ・・・・C
と書ける。これは進行波ではなく(e)[ ]といわれるものである。これの振幅は場所により異なり,振幅がいつも0である点はCから(f)[ ]=n(n=0,1,2,…から求められる。これらの点を(g)[ ]という。また振幅がいつも最大の2aである点は(h)=2n+1,n=0,1,2,・・・・から求められる。


14-1 音の回折、反射、屈折
問95 音が縦波であることを説明せよ。
問96 x軸の正の向きに進んでいる縦波が,x軸に垂直で原点O上にある固い壁に入射している。図は,位置xにおける媒質の変位をy軸に書き表すことにより,ある時刻の入射波の波形を描いたものである(点線は補助のためのものである)。入射波の振幅をA,速さをvとするとき,この縦波は時刻tにおいて
と書くことができる。図においてx軸の1目盛りは1[m]である。

(1) この入射波の振動数はいくらか。
(2) 入射波の速さv の値はいくらか。
(3) 図の入射波において,媒質の密度が最大になっている地点,および媒質の振動する速さが0になる点は,それぞれこの波形のどこか。いずれも,図の−9≦x≦0 の範囲でそれらのx座標をすべてあげよ。

14-2 ドップラー効果
問97 音のドップラー効果
寒い屋外において,一定の振動数の音源が,建物の壁に向かって垂直な方向から一定の速さが近づいている。音源から出て壁に垂直に当たった音波の内,その大部分は垂直に反射し,わずかの部分が方向を変えることなく壁を通して広くて暖かい屋外に進む。また音源からは,その進行方向に対して反対の方向にも音波が出ている。これら四つの音波のうち,壁に向かって垂直に進む音波の波長は,静止した人から見るとλである。音源の速さをu,屋外および屋内における音波の速さをそれぞれv1v2として,これらの音波の静止した人から見た波長について答えよ。ただし,v1uv2uである。

(1) 壁で反射した音波の波長はいくらか。
(2) 屋外を進む音波の波長はいくらか。
(3) 音源の進行方向に対して反対の方向に音源から出ていく音波の波長はいくらか。

14-3 弦振動
問98 右図のように,xLが固定端で,xLの媒質中を速さv,振動数fの正弦波の横波がx軸の正の方向に進行していて,x=0での媒質の変位が
 y1(0,t)=Asin2πf tである。この波の位置x,時刻tにおける変位はy1xt)= (1) である。xLで反射波が生じると媒質中には入射波と反射波が同時に存在し,そのときの合成波の変位は (2) 原理によっておのおのの波の変位の和になる。入射波のxLでの変位はy1Lt)= (3) であり,固定端xLでは任意の時刻において合成波の変位は0になっていなければならないことから,xLでの反射波の変位はy2Lt)= (4) であり,固定端での波の位相の変化が (5) であることを示している。反射波は速さvx軸の負の方向に進行し,xLでの変位が位置xにやってくるのに時間 (6) だけおくれることから,反射波の位置x,時刻t での変位はy2xt)= (7) となる。したがって,位置x,時刻t での合成波はyxt)=2Acos2πftL/v)× (8) である。
 いまx=0も固定端とすると,上の考察から,振動数は正の整数mを用いてfm= (9) となる。



解答



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