お知らせ 「物理の部屋」が書籍化されました 書名 「独習者のための高校物理」 出版社 工学社 出版日 2011年4月末 「amazon,紀伊国屋,セブン&アイのセブンネットショッピング,e-hon,JBOOK」 などでも取り扱っています。 本サイトの内容を整理加筆したものです。書店でご一読いただければ幸いです。 |
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はじめに
物理は面白そうだがわからない,わかりにくい。面白くない。でも知りたい,知らなければならないという人も少なくない。
この「物理の部屋」は,高校物理レベルの古典物理を上記の分野別に講義,解説しています。対象は,高校生,大学生ではあるが高校で物理を履修していない者・履修したが不勉強であったという人,またこれから教員としてスタートする人のために作られたものです。
2003年から高校の学習指導要領が変更になった。物理は物理T,Uに変更になったが,中学校での履修内容不足の補填のため,多くの標準的な教科書では,電磁気の補いをしてから,波動からはじめらており,かつて力学からはじめられた熱,波動,電磁気,原子という従来の配列が変えられ,理解を不自由なものにしていることは否めない。中学の補い部分は定性的な扱いになっているから、その後に学習をし直さなければならない。また、学習指導要領の第5-物理II-2内 容(3)[物質と原子 ア 原子,分子の運動((ア) 物質の三態(イ) 分子の運動と圧力)、イ 原子,電子と物質の性質((ア) 原子と電子、(イ) 固体の性質と電子)]と (4)[原子と原子核 ア 原子の構造((ア) 粒子性と波動性、(イ) 量子論と原子の構造)、イ 原子核と素粒子((ア) 原子核、(イ) 素粒子と宇宙) ]を生徒の興味・関心等に応じていずれかを選択することができる、としている。旧課程の内容をほとんど減ずることなく、固体の性質と電子などを新たに加えていることにより、特に物理Uの負担が増加していることは確かである。
物理概念の系統性に困難さを抱えている例として,静電場を履修しないで,電流,電位,電界内の仕事が出てきたり,円運動,単振動をやらないうちに波動を理解させるということにかなりの無理がある。物理Tで三角関数を使わないで波動を理解させようとすることは相当な無理がある。物理Uの単振動の最後に三角関数を使った波動の変位の式が出てくるが,それ以降のつながりがない。波動の干渉を数式を使って理解させようとするための流れが作られてない。内容を分散し、学習を繰り返えして理解を深めさせるつもりだろうが,分からなければ覚えればいいや,と暗記するだけになりかねない。
物理は,単に式を公式として覚え数値を代入して試験でいい点をとれれば,物理が分かったなどと考えていたら大間違いだ。現象を表す式がどのように出されてきたのか(それが実験式なのか,定義式なのか)を考え理解しなければ,面白くもなんともない。意地の悪い,テストの平均点が低いことを迷惑顔で自慢そうに語っている物理教師に,「なぜ,そうなるのか」と迫るためにも,基礎をしっかり学習してほしい。
必要に応じて,微分,積分も使っているので参考にしてほしい。各分野ごとに物理学者の業績も掲載したので参考にして下さい。
では,上のメニューから分野を選択して学習を開始しましょう。(2005/5)
はじめに(続)
新学習指導要領が改定された。高校では平成24年度から数学、理科が先行実施(年次進行)され平成25年度から全教科科目で年次進行が実施される。高校理科の標準単位数「( )内の数」は
「科学と人間生活」(2)、「物理基礎」(2)、「物理」(4)、「化学基礎」(2)、「化学」(4)、「生物基礎」(2)、「生物」(4)、「地学基礎」(2)、「地学」(4)、「理科課題研究」(1)である。
これらの中で、「科学と人間生活」を含む2科目または基礎を付した科目を3科目選択することが義務付けられている。物理に関しては、「物理基礎」、「物理」の2科目を履修すれば、従来の「物理T」+「物理U」の内容と変わりない。ただ、「物理基礎」の内容はかつての「理科T」の物理分野に相当し、これだけでは力学の一部だけしか学ぶことはできない。学習指導要領「物理基礎の目標」に「日常生活や社会との関連を図りながら物体の運動と様々なエネルギーへの関心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,物理学的に探究する能力と態度を育てるとともに,物理学の基本的な概念や原理・法則を理解させ,科学的な見方や考え方を養う。」とあるが、狭い分野で「物理学的に探究する能力」を習得させるにはそれなりの指導技術を要するように感じられる。
毎回の改定が各分野の内容の系統性をどのように考慮して行われているのか分かりにくい点があるが、少なくとも理工医学系の進学を考える場合は「物理基礎」、「物理」の2科目を履修しなければならないだろう。受験に関係しないからといって原子分野を割愛している学校があると聞くが、昨今の社会状況を鑑みれば、受験のためでなく現代を生きる日本人として、原子力に関する正当な知識を得ておくことは必須と思われる。原子力に関する言われなき風評被害が、妥当な知識に基づかず単に感情で解決されているなら悲しいことである。入試でこの分野を試験範囲外にしている大学は時代に逆行していると言わなければなるまい。
改定の趣旨、詳細な分野内容について 高等学校学習指導要領解説 を参照されたい。
なお、参考までに高校の新学習指導要領が改定されたのは以下の通りである。( )内は物理の科目名、同時に履修すべき科目。
昭和23年策定、、昭和27年(物理)、昭和31年(物理)、昭和38年度(物理A、物理B)、昭和48年度(基礎理科、物理T、U)、昭和57年度(理科T、理科U、物理)、平成6年度(総合理科、物理TA、、物理TB、物理U)、平成15年度(理科基礎・理科総合A・理科総合B、物理T、物理U)でいずれも学年進行である。(2012/3/31加筆)
序論
物理学とは
自然界に起こる諸現象には一定の規則性があり,それらの法則性を探求するのが自然科学である。物理学は宇宙のあらゆる現象を対象とする学問である。
物理学のはじまりは天体の運動から始まったといってよい。ケプラーが太陽系の運動の3法則を発見し,これを手がかりとしてニュートンが力学を完成させた。19世紀の終わりにはファラデーやマックスウェルによって電磁気学が,また熱に関係した熱力学などが確立され,古典物理学と称される体系ができあがった。
20世紀になるとそれまでの巨視的に自然を見るだけでなく,微視的な世界である原子に目を向け,電子の発見をはじめとして原子構造を探求してきた。その結果,ニュートン力学に従わない世界のあることがわかってきた。太陽系を小さくしたものが原子なのではなく,完全と思われた古典物理学が,微視的世界ではそのまま成り立たないことから,新しい物理学である量子力学が作られ現在に至っている。
自然界の規則性,法則性を見いだすためには客観的に観察された結果が必要である。定量的に取り扱われた実験を元にした結果の解析から見いだされた法則性は,今あることだけでなく,これから起こるであろう事も予測できる。自然科学の目的は「自然のしくみ」を知ろうとすることにあるが,得られた知識を応用することによって機械,電気,電子,建築,材料など日常生活の物質的な生活に大いに寄与している。また,エネルギー源として原子力が利用されているがこれらは物理学のもたらした大きな成果と言っていいだろう。
自然科学が進歩しても,研究を進めるごとに新しい疑問が投げかけられ,「自然を解明する」ことが簡単でないのは言うまでもない。自然に対し謙虚に「なぜか」という疑問を持ち続けていくことが必要であろう。
参考図書
下記の書物を利用して内容を深めていってほしいと思います。
基本的内容から学ぶために
「橋元の物理」学研
「チャート式物理」数研出版
大学初学者程度の内容を学ぶために
「科学者と技術者のための物理学Ta,Tb力学・波動,U熱力学,V電磁気学」
R・Aサーウエイ著 松村博之訳 学術図書出版社
「物理の考え方」1力学の考え方,2電磁気の考え方,3熱・統計力学の考え方,4量子力学の考え方,
5相対性理論の考え方 砂川重信著 岩波書店
「物理学」[新訂版] 阿部龍蔵・川村清・佐々田博之共著 サイエンス社